この度は交通事故に遭われ、心身ともにお辛い状況のことと存じます。
突然の出来事に加え、今後のことや「過失割合」についてご不安やご不満を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、交通事故の被害者の方が過失割合について正しく理解し、不利な状況を強いられることなく、適正な解決を目指せるよう、交通事故案件を専門とする弁護士が徹底解説いたします。
正しい知識を得て、不安を取り除き、最善の選択をするための一助となれば幸いです。
監修者: LEGAL Zeus 法律会計事務所
代表弁護士 中井 達朗
【交通事故の被害に遭われた方へ】
交通事故に遭った直後、何をすべきか、そしてその後どのような手続きが必要になるのかについて、正確に把握されている方は多くありません。
当サイトでは、事故発生直後の対応から、入院・通院中の注意点、保険会社との示談交渉、慰謝料の請求に至るまで、被害者の方が知っておくべき情報をわかりやすく解説しています。
また、当事務所では交通事故に関する無料相談を随時受け付けております。
事故に関する不安やお悩みがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
早期の対応が、適切な解決への第一歩となります。
目次
1.交通事故の「過失割合」
1.過失割合の定義
過失割合とは、発生した交通事故に対する各当事者の責任(不注意の度合い)の割合をいいます。
例えば、ある事故であなた(被害者)の過失が20%、相手方(加害者)の過失が80%と判断された場合、これが過失割合です。
2.過失相殺
被害者側にも過失があった場合に、その過失の分だけ損害賠償額が減額されることをいいます。
【注意!】自賠責保険と任意保険での過失割合の扱いの違い
自賠責保険:被害者の救済を目的としているため、被害者に重大な過失(70%以上)がなければ、原則として減額されません(重過失減額)
ただし、傷害部分で最大20%の減額(過失割合7割以上で2割減額など)があります。
任意保険:過失割合に応じて厳密に賠償額が減額されます(過失相殺)
3.過失割合が重要な理由:慰謝料、治療費、修理費など、損害賠償全体に関わる
過失割合は、慰謝料(入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料)、治療費、休業損害、逸失利益、車両の修理費など、ほぼ全ての損害項目に影響します。
そのため、適正な過失割合を認めてもらうことが非常に大切です。
4.「0対100(ゼロヒャク)」になるケースとならないケース
「追突されたのだから、当然相手が100%悪い(0対100)はずだ」と思われるかもしれません。
停車中に追突された場合など、多くのケースで被害者の過失は0%となります。
しかし、以下のようなケースでは、被害者側にも一定の過失が認められることがあります。
急ブレーキをかける正当な理由がなかった場合
夜間に無灯火で走行していた場合
駐停車禁止場所に駐停車していた場合
交差点などで、被害者側にも何らかの不注意があったと判断される場合など
2.過失割合は誰がどうやって決める?決定プロセスと重要書類
1.過失割合の決定に関わる主体 当事者、保険会社、弁護士、裁判所
最終的な過失割合は、まず当事者同士(それぞれの保険会社を通じて)の話し合いで決まります。
ここで合意に至らない場合は、弁護士が介入して交渉したり、ADR(裁判外紛争解決手続)を利用したり、最終的には裁判所が判断することになります。
2.警察の役割と限界 警察は過失割合を決定しない
事故が起きると警察が現場検証を行いますが、警察は民事不介入の原則に基づき、当事者間の過失割合を決定しません。
警察の役割は、主に事故の状況を捜査し、刑事責任や行政処分を判断することです。
3.保険会社の役割と基準
多くの場合、過失割合の交渉は、当事者が加入している任意保険会社の担当者同士で行われます。
保険会社は、過去の裁判例や業界内の基準を基に過失割合を提示してきます。
4.ドライブレコーダーの重要性 客観的な証拠としての価値と提出時の注意点
近年、ドライブレコーダーの普及により、事故状況の客観的な証拠が得やすくなりました。
信号の色、衝突の瞬間、相手の速度、自車の動きなどを記録した映像は、過失割合の認定において非常に強力な証拠となります。
事故後、上書きされないために、すぐに映像を保存しましょう。
安易に相手方や相手保険会社に映像を渡す前に、まず弁護士に相談し、映像の内容を精査することをお勧めします。
3.【ケース別】具体的な事故 類型ごとの過失割合の目安と修正要素
1.追突事故の過失割合
基本過失割合:被害者0%:加害者100%
停車中や赤信号で停止中に後方から追突された場合など。
被害者の不必要な急ブレーキ:被害者にも10%~30%程度の過失が認められる場合がある。
被害車両の灯火類の故障(夜間):被害者に10%~20%程度の過失。
駐停車禁止場所での駐停車:被害者に10%程度の過失。
2.交差点での事故の過失割合
・信号機のある交差点
青信号同士の直進車同士の出会い頭衝突:被害者0%:加害者100%(通常、一方の信号無視が前提)
赤信号無視の車両と青信号の車両の衝突:赤信号無視100%:青信号0%
黄信号で進入した車両と赤信号で進入した車両:黄信号20%:赤信号80%
双方黄信号で進入:双方50%:50% 右折車と直進車(右直事故)
基本:直進車20%:右折車80%(青信号時)
15km以上の速度超過、ゼブラゾーン進行、右折車の明らかな早回り右折などにより直進車の過失減(直進車側)
直進車の著しい速度超過、直進車が黄信号で進入、右折車が既に右折を完了していた場合などにより右折車の過失減(右折車側)
・信号機のない交差点
同幅員の道路における出会い頭衝突:左方車40%:右方車60%(左方優先)
明らかに広い道路と狭い道路の交差点:狭路車70%:広路車30%
一時停止規制のある側とない側:一時停止側80%:規制なし側20%
一時停止側の車両が一時停止後、安全確認して進入した場合、過失割合が軽減される可能性。双方の速度、見通しなど。
3.車線変更時の事故の過失割合
基本:車線変更車70%:後続直進車30%
後続直進車の速度超過:後続直進車の過失増。
車線変更車の合図なし、急な車線変更:車線変更車の過失増。
4.駐車場内の事故の過失割合
駐車場内は道路交通法が直接適用されない場合もありますが、基本的には道路上の事故に準じた考え方で過失割合が判断されます。
通路を進行する車両と駐車スペースから出ようとする車両:駐車スペースから出る車両70%:通路進行車両30% (状況により変動大)
修正要素: 進行速度、安全確認の程度、通路の幅、駐車方法など。
5.歩行者と自動車の事故の過失割合
歩行者は交通弱者であるため、自動車側の過失が重くなる傾向があります。
横断歩道上の事故(信号機なし):歩行者0%:自動車100%
横断歩道外の横断:歩行者10%~30%:自動車70%~90%(状況による)
修正要素: 夜間、幹線道路、歩行者の飛び出し、幼児・高齢者など。
6.自転車と自動車の事故の過失割合
自転車も交通弱者として保護されますが、交通ルール違反があれば過失が問われます。
信号機のある交差点での右折自動車と横断歩道を直進する自転車:自転車10%:自動車90%
修正要素: 自転車の信号無視、無灯火(夜間)、並進など。
7.バイクと自動車の事故の過失割合
バイクは自動車に比べて車体が小さく発見されにくいため、自動車側の注意義務がより求められる一方、バイク特有の危険な運転(すり抜けなど)はバイク側の過失となります。
右直事故(自動車が右折、バイクが直進):バイク15%:自動車85%
修正要素: バイクの著しい速度超過、自動車の合図なし右折など。
※上記はあくまで「基本過失割合」です。
「修正要素」 として、例えば以下のようなものが考慮され、基本割合から増減します。
著しい過失: 脇見運転、携帯電話使用、酒気帯び運転(基準値以下でも)、カーナビ操作など。これらは10%~20%程度の過失加算となることが多いです。
重過失: 居眠り運転、無免許運転、酒酔い運転(基準値以上)、麻薬等運転、著しい速度超過(30km以上)、妨害運転(あおり運転)など。これらは20%以上の過失加算となることが多いです。
その他:夜間、雨天、濃霧、路面凍結、幹線道路、住宅街、見通しの悪い交差点、児童・高齢者・幼児・身体障害者など。
4.保険会社から提示された過失割合に納得いかない場合
1.まずは冷静に、そして安易に同意しないことの重要性
提示された過失割合に疑問を感じても、感情的になるのは得策ではありません。
しかし、納得できないまま安易に同意(示談書にサイン)してしまうと、後から覆すのは非常に困難になります。 必ず慎重に対応しましょう。
2.保険会社の担当者に根拠を確認する
具体的な根拠を保険会社の担当者に確認しましょう。
曖昧な回答しか得られない場合は、疑問を持つことが大切です。
3.自分の主張を裏付ける証拠を集める・再確認する
ドライブレコーダーの映像: 最も客観的な証拠となり得ます。
事故現場の写真: 事故直後の車両の位置関係、道路状況、ブレーキ痕など。
目撃者の証言: 協力してくれる目撃者がいれば、連絡先を交換し、証言を記録してもらう。
実況見分調書、供述調書: 取り寄せ可能であれば内容を確認する。診断書、修理見積書など。
【ポイント!】 証拠は事故直後だけでなく、後からでも収集できるものがあります。
例えば、事故現場の道路状況(道路幅、標識、見通しなど)を改めて写真や動画で記録したり、類似の事故に関する判例を調べたりすることも有効です。
諦めずに証拠を探しましょう。
4.「示談書」にサインする前の最終確認
全ての損害賠償項目(治療費、慰謝料、休業損害、修理費など)と過失割合について合意に至ると、保険会社から「示談書(免責証書)」が送られてきます。
一度示談書にサインしてしまうと、原則としてその内容を覆すことはできません。
(例外的に無効や取消しが認められるケースもありますが、極めて稀です。)
少しでも疑問があれば、サインせずに弁護士にご相談ください。
5.過失割合で弁護士に相談・依頼するメリットとタイミング
過失割合の問題で悩んだら、交通事故に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
1.弁護士に依頼する最大のメリット
法的な専門知識に基づき、適正な過失割合を主張できる: 弁護士は、最新の判例や法律の専門知識に基づき、あなたの事故状況を正確に分析し、有利な証拠を収集・主張することで、保険会社が提示する過失割合よりも有利な結果を導き出せる可能性があります。
保険会社との交渉を代行してくれる(精神的負担の軽減): 保険会社の担当者との煩雑な交渉や、専門的なやり取りは全て弁護士に任せることができます。これにより、あなたは治療に専念でき、精神的なストレスから解放されます。
【ポイント!】
弁護士基準での慰謝料算定など、賠償金全体の増額が期待できる
交通事故の慰謝料には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準(裁判基準)」という3つの基準があり、一般的に「弁護士基準」が最も高額です。弁護士が介入することで、過失割合だけでなく、慰謝料全体も増額できる可能性があります。
2.弁護士に相談すべきタイミング
事故直後から: 最も理想的なのは事故直後です。証拠収集のアドバイスや、今後の見通しについて早期に助言を受けられます。
保険会社から過失割合が提示された時:提示された割合に少しでも疑問があれば、すぐに相談しましょう。
交渉が難航している時: ご自身での交渉に限界を感じたら、無理せず専門家の力を借りましょう。
早めの相談が有利な結果に繋がりやすいのは事実です。証拠が散逸する前、記憶が鮮明なうちにアドバイスを受けることで、その後の展開がスムーズになります。
3.「弁護士費用特約」の活用
「弁護士費用特約」とは、自動車保険などに付帯している特約で、交通事故で弁護士に相談・依頼する際の費用(相談料、着手金、報酬金など)を保険会社が負担してくれるものです(通常、上限300万円程度)。
【参考記事】交通事故の弁護士費用特約と成功報酬、「費用負担ゼロ」で解決!被害者が知っておくべき全知識
6.失敗しない!交通事故に強い弁護士の選び方と費用
いざ弁護士に相談しようと思っても、どの弁護士に依頼すればよいか迷うかもしれません。以下のポイントを参考にしてください。
1.交通事故案件の経験・実績が豊富
弁護士にもそれぞれ得意分野があります。
交通事故の過失割合や損害賠償請求は専門性が高いため、交通事故案件の取り扱い経験が豊富で、実績のある弁護士を選びましょう。
法律事務所のウェブサイトで、解決事例や交通事故に関するコラムなどを確認するのも良いでしょう。
2.説明が分かりやすく、親身になってくれる
専門用語ばかりで説明が難解だったり、高圧的な態度だったりする弁護士では、安心して任せられません。
あなたの話を丁寧に聞き、分かりやすい言葉で説明し、親身になって対応してくれる弁護士を選びましょう。
多くの法律事務所では無料相談を実施しているので、実際に話してみるのが一番です。
3.費用体系が明確
弁護士費用には、相談料、着手金(依頼時に支払う費用)、報酬金(事件解決時に成果に応じて支払う費用)、実費(交通費、印紙代など)があります。
見積書を出してもらうのも良いでしょう。
費用体系が明確で、事前にきちんと説明してくれる弁護士を選びましょう。
- 複数の弁護士に相談してみる
可能であれば、複数の弁護士に相談し、比較検討することをお勧めします。
それぞれの弁護士の対応や費用、事件解決への見通しなどを比較することで、より納得のいく選択ができるでしょう。 - 相談時に準備しておくと良いものリスト
弁護士に相談する際は、以下のものを準備しておくと話がスムーズに進みます。
事故状況のメモ(日時、場所、事故の経緯など)
交通事故証明書
実況見分調書(あれば)
ドライブレコーダーの映像(あれば)
診断書
治療費の領収書
休業損害証明書
保険証券(自動車保険、弁護士費用特約の有無を確認するため)
相手方保険会社からの連絡書類(過失割合の提示書など)
全て揃っていなくても構いません。まずは分かる範囲で情報を整理しておきましょう。
【Q&A】過失割合に関するよくある質問
Q1:過失割合に納得できないまま治療費の支払いが打ち切られたらどうすればいいですか?
A1:保険会社が一方的に治療費の支払いを打ち切ることがあります(特に「症状固定」を理由に)。しかし、医師が必要と判断している限り、治療を続ける権利があります。まずは主治医と相談し、治療の必要性を確認しましょう。健康保険を使って治療を継続し、後日、加害者側(保険会社)に請求する方法があります。弁護士に相談すれば、治療費支払いの交渉や、今後の対応についてアドバイスを受けられます。
Q2:相手が無保険だった場合の過失割合はどうなりますか?
A2:相手が無保険であっても、過失割合の考え方自体は変わりません。問題は、相手に支払い能力があるかどうかです。相手に支払い能力がない場合、ご自身の「人身傷害保険」や「無保険車傷害保険」が利用できる可能性があります。また、政府の保障事業を利用できる場合もあります。弁護士にご相談ください。
Q3:物損事故でも過失割合は重要ですか?
A3:はい、重要です。車両の修理費用などが過失割合に応じて減額されるため、物損事故であっても過失割合の交渉は慎重に行うべきです。少額だからと安易に妥協せず、納得できない場合は専門家に相談しましょう。
Q4:自分の保険(車両保険や人身傷害保険)を使うと等級が下がるのが心配です。
A4:確かに、保険を使うと翌年度以降の保険料が上がることがあります(等級ダウン)。しかし、相手の過失が大きいにもかかわらず、保険料を気にして十分な補償を受けられないのは本末転倒です。弁護士費用特約の利用は等級に影響しません。また、人身傷害保険も、過失割合に関わらずご自身の損害額を受け取れるメリットがあります(保険会社や契約内容によります)。保険を使うことによるデメリットと、受けられる補償内容を天秤にかけ、総合的に判断することが大切です。
Q5:警察の現場検証に立ち会えなかった場合は不利になりますか?
A5:必ずしも不利になるとは限りませんが、事故状況についてご自身の認識を警察に伝えられないのは望ましくありません。後日、警察署で事情聴取を受ける機会があれば、そこで正確に説明しましょう。また、弁護士を通じて実況見分調書などを確認し、事実と異なる点があれば、それを覆すための証拠(ドラレコ映像、目撃証言など)を提出する必要があります。
【おわりに】
交通事故の過失割合は、専門的な知識が必要で、被害者の方にとっては非常に複雑で分かりにくい問題です。保険会社から提示された過失割合に納得がいかず、理不尽だと感じながらも、諦めてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、どうか諦めないでください。
あなたは、交通事故によって受けた損害について、正当な補償を受ける権利があります。そのためには、まず正しい知識を持ち、ご自身の状況を客観的に把握することが大切です。そして、少しでも疑問や不安があれば、遠慮なく専門家である弁護士にご相談ください。
この記事が、あなたの不安を少しでも解消し、適切な行動を起こすための一助となれば幸いです。
私たちはあなたの不安に寄り添い、最善の解決策を一緒に見つけるパートナーです。
当事務所では、交通事故の被害者向けの無料相談を承っております。交通事故に詳しい弁護士が対応しますので、弁護士費用についてご不明な点がございましたらお気軽にご相談ください。